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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第19章 還るべき場所
 太陽と稲穂の黄金を纏う人に焦がれて、現では引き離され、夢では交わり……それでも女達の不興をかって身を焼いた。
 けれどあの苦しみなんてまだ大したことではなかった。あれはまだ、その先にある苦しみの予兆。
 ……この世界はいつだって、女がその身を炙られる時は愛しい男との離別を表していた。
 (……嫌だよ……)
それを頭が理解するのと同時に、ぽろっと涙がこぼれた。
 私は花の女神様じゃない。お母さんじゃない。
 でも、だから……まだ何も知らない。
 愛を囁かれる喜びも、それに身を委ねる幸せも、何も知らない。眼差しを交わして、腕を伸ばして。狭い褥の中でだけでも、二人だけの音で紡ぐ世界の甘美さを知らない。表面だけ撫でられるのじゃない、もっと深く、もっと無防備に、もっと危なっかしく。その末に結ばれる、何かの重さも知らない。本物の腹の重みを知らない。それが苦しみの重さなのか幸せの重さなのか、それとも何か違うものの重さなのか、まだ知らない。腹を抱える手に伝わる温もりも鼓動も、それを言祝(ことほ)がれる喜びも誇らしさも、愛する人から労られて慈しまれる、その満ち足りた心地も──まだ何も知らない。
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