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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第19章 還るべき場所
振り向いて、瞳に被さる橙色が火明(ほあ)かりだったことを認識した神依は、本能的にそれを恐れ、おののいた。
一体どこから発火したのか──壁を伝う火は神依が振り向いた瞬間から空気を食らって爆ぜ、あっという間に建物全体に広がった。ごうごうと音を変え、風を生んでは巻き上がり──そして空気に溶ける穂先の部分は蛇のようにうねり、どんどん距離を詰めてきた。
(うそ……)
このままでは焼け死んでしまう。
神依は重い腹にまごつきながら、戸口にすがりつくようにしてやっと立ち上がった。ぐにゃりぐにゃりと歪む思考の中に自分のものではない記憶が混ざって、その自分のものでない誰かが何を考えているか分かって、必死で岩壁の戸に爪を立てる。
(出して……お願い、ここから出して! 私は──)
──私は、違うの。
私は、あの女神様とは違う。
「……っ」
思ってから、つきりと心が痛む。それが何故かものすごく悲しいことだったような気がして、涙が滲んだ。更にその向こうに誰かの顔が浮かんで、もっと胸が痛くなった。
苦しい。でも──なのにその圧迫感は、同じくらい愛しい。
(……様。ひ、つぎ様、助けて……!)
一体どこから発火したのか──壁を伝う火は神依が振り向いた瞬間から空気を食らって爆ぜ、あっという間に建物全体に広がった。ごうごうと音を変え、風を生んでは巻き上がり──そして空気に溶ける穂先の部分は蛇のようにうねり、どんどん距離を詰めてきた。
(うそ……)
このままでは焼け死んでしまう。
神依は重い腹にまごつきながら、戸口にすがりつくようにしてやっと立ち上がった。ぐにゃりぐにゃりと歪む思考の中に自分のものではない記憶が混ざって、その自分のものでない誰かが何を考えているか分かって、必死で岩壁の戸に爪を立てる。
(出して……お願い、ここから出して! 私は──)
──私は、違うの。
私は、あの女神様とは違う。
「……っ」
思ってから、つきりと心が痛む。それが何故かものすごく悲しいことだったような気がして、涙が滲んだ。更にその向こうに誰かの顔が浮かんで、もっと胸が痛くなった。
苦しい。でも──なのにその圧迫感は、同じくらい愛しい。
(……様。ひ、つぎ様、助けて……!)

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