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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第18章 垂る穂
 何かを断ち切られた日嗣の記憶の中で舞ってくれた幻想の巫女と、それに導かれるように降された神託……けれどもそれは日嗣が自然のままに、あるべき姿を教えてくれた。
 それは、敗北でも泣き落としでもなければ恥でも卑屈でもない。その清らかな心と誇りは、左手に結んだ下手くそな紐飾りが示してくれた。だから日嗣は、それをするに何の躊躇いも無く……むしろ祈りのように純な気持ちで、一度天照と月読に真正面から向き合うと、
「ひ──日嗣……」
その場に膝を折って衣を正し、その場に在った誰よりも低く低く、畳に額を擦り付けた。
 「……行かせて下さい……、お祖母様」
「……っ」
それは──そこに在る誰もが、夢を見ているのではないかと思う光景だった。
 あれほど女を遠ざけ、誰にも媚びず、靡かず、それ故に巫女を惹き付けて止まなかった美しき神が、地べたに唇を捧げる程に伏して手を着いて、ただ一人の少女を乞うている。
 宝を捨て、名を捨て、位を捨て、居場所を捨て、そして命を捨てる覚悟でこの男はたった一人の女を求めている。
 神でもない、地位も持たない……ただ、恋しいだけの少女を。
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