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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第18章 垂る穂
 そんな和(にぎ)なる心は怒りも怨みも荒(あら)の心を鎮めて、日嗣の中に一雫の白露となって……落ちる。
 『……青き穂よ』
いつか聞いたことのある声が耳をくすぐったのは、そんな時だった。
 それは水音と花の香(か)と共に日嗣の中に降りてきて、また孤独に干上がろうとしていた魂を優しく包んでくれる。慰めてくれる。
 ……まだあの巫女が、あの時と同じように……初めて廻(めぐ)り逢った時と同じように、手を伸ばせば届く場所にいるのだと、伝えてくれる。信じさせてくれる。
 そして、日嗣がもう一度神として成れるよう──
『……稲は人の手によって刈られ、殻を剥かれ、炊かれて醸された後に、ようやく命の源になるもの。だから──あなたも』
「……」
『手を裂く鋭き葉を伸ばすより……柔らかな土と水に満ち、月日を経て。……実がなったのなら、頭(こうべ)を垂れなさい』
「……っ……」
それだけを、諭すように告げてくれた。

***

 (……、神依。……お前は、本当に……)
……それはまるで、白昼夢を見ていたような感覚だった。
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