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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第18章 垂る穂
 「……その美しくもない、こぼれた刃の如き野蛮な神気を収めよ……それがこんなにもいとけない、愛で奉らるるべき女神に向けるに相応しい態度と思うてか。……そんなやわな光では、お前の遥か頭上にある日輪月輪には到底届かぬぞ」
「……」
しかし日嗣はより一層敵意を剥き出しにして、それに対する。そもそもの原因を作ったのはこの神であり、怒り恨むならむしろ祖母よりこの男神の方であった。
「……どれほど私の光が朽ちた鋼のように鈍かろうと、空に振りかざす必要も無い。今目の前に在る、嫉妬に狂った女神と想い人を寝取ろうとする男神を振り切るには充分だ」
「……愚か者め」
「ッ……!!」
 一閃。
 彗星の如き白銀の光が宙を裂いたのは、まさにその瞬きの間だった。
 月読は何の矯めも無く、踏み出した一歩と共に手にした剣を横に振るい遠心力で鞘を吹き飛ばすと、その半円の軌道のまま眼前に──日嗣の首をはねる勢いで、剣の先で弧を描いた。
 否、瞬間的に鋭くなった月読の気配に日嗣が気付かず、その半歩を下がらなかったら確実に喉を裂かれていただろう。或いは、もう片方の手にあった幼い女神が、無秩序な暴威を殺(そ)ぐいい“重し”になってくれていたのかもしれない。
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