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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第18章 垂る穂
また同じように黙りこくってしまった天孫に、その日嗣ぎの字を掲げた者が何を選ぶのか、周囲の神々も固唾を飲んで見守った。
いずれ自分達が仰ぎ、担ぐに相応しい天孫には、理想像以外のものは何もいらない。必要ない。だから今まで通り、近寄るのも難き冷徹な、日嗣ぎの名に相応しい清廉な物言い、振る舞いをしてくれるかと、誰もが祈りのようにそれを想い見守った。
「……分かりました」
やがて、その一言が広間に静かに響く。
「日嗣──」
そうして一つの剣を結わえた紐を解き、一つの玉飾りをほどいた日嗣を御簾越しに見た天照は、心底安心したように胸を撫で下ろして破顔した。日嗣はその立場をわきまえ、逸る心を落ち着かせ、武装を解いてくれたのだ。
またそれにつられるように神々も息を吐き、肩から力を抜く。
天照の跡を継ぐ者は、今やこの目の前に在る若き神しかいない。月読は妻子を持たず、この若き男神の父は既にそれを辞退している。故に今の神世に、天照自身の血と、格と、威を備えた者は日嗣をおいて他に無い。だからこそ彼女はなおのこと世継ぎの孫を愛しくも思い、たとえ出奔していたとしても、今日までその座を奪わずに来たのだ。
それを、たった一人の女のために台無しにすることはない。
いずれ自分達が仰ぎ、担ぐに相応しい天孫には、理想像以外のものは何もいらない。必要ない。だから今まで通り、近寄るのも難き冷徹な、日嗣ぎの名に相応しい清廉な物言い、振る舞いをしてくれるかと、誰もが祈りのようにそれを想い見守った。
「……分かりました」
やがて、その一言が広間に静かに響く。
「日嗣──」
そうして一つの剣を結わえた紐を解き、一つの玉飾りをほどいた日嗣を御簾越しに見た天照は、心底安心したように胸を撫で下ろして破顔した。日嗣はその立場をわきまえ、逸る心を落ち着かせ、武装を解いてくれたのだ。
またそれにつられるように神々も息を吐き、肩から力を抜く。
天照の跡を継ぐ者は、今やこの目の前に在る若き神しかいない。月読は妻子を持たず、この若き男神の父は既にそれを辞退している。故に今の神世に、天照自身の血と、格と、威を備えた者は日嗣をおいて他に無い。だからこそ彼女はなおのこと世継ぎの孫を愛しくも思い、たとえ出奔していたとしても、今日までその座を奪わずに来たのだ。
それを、たった一人の女のために台無しにすることはない。

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