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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第18章 垂る穂
 先に来て国津神の一群に紛れていた猿彦はその口許に笑みを浮かべて迎え、またその一際目立つ友の姿を認めた日嗣も微かに笑んで応えた。
 「──おいで、日嗣」
「……はい」
そこへ、祖母から声が掛かる。あれから時間が経っていたからか、それとも奥に祭られている神々の加護故か、祖母はいささか理性を取り戻していたようで、その声は普段のものと変わらないほど尊大なものに戻っているようだった。
 日嗣は入口から一直線に空けられた空間を歩み、二張りの御簾の前まで歩み出る。足を踏み出す度に左右の神々の視線が動き、良きも悪きも囁きが飛び交った。
 「お座り」
「それには及びません。すぐに出ていきますので」
「……っ」
それに片方の、朱の房や縁の御簾向こうからは明らかに不機嫌そうな、もう片方の白の房や縁の御簾向こうからは軽く笑う息遣いが聞こえた。
 それに童女の影は隣を責めるように見遣って、再び続ける。
「──出ていかせると思うか。後ろを見よ、いずれお前が背負い率いる者共じゃ。これらは皆、お前の勝手を憂いここに参じた」
「皆とは思いません。元より神は遊ぶもの、肩書きばかり御立派な放蕩者の跡継ぎが何を仕出かすか、暇潰しの見物に参ったのでしょう」
「日嗣」
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