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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第18章 垂る穂
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「──失礼致します。……」
案内されるまま社の脇から廊下を進み正面の扉まで歩み出れば、そこには上にも横にも広大な空間が広がっていた。
初めて目にしたその広間中の調度、装飾は、決して派手ではないが絵も彫りも高天原でも随一を誇る精度のものが全てにおいて新品の如く揃えられ、普段は人の出入りすら無い癖に、酔狂ここに極まれりの境地で日嗣は一度視線を巡らせた。
更に柱で区切られた左右の空間には天津神も国津神も主だった面々が数多く集まって序列に並び、彼らは彼らで現れた天孫のその姿に息を呑んで驚愕した。
全ての役目を放棄して在り、自らの主に据えるにはどこか心許なく頼りない、そんな寄る辺なき男神は今や盛大に様変わりして──その形(なり)は音に聞いた暴神、素戔鳴を想起させるような軍神(いくさがみ)のものとなっていた。
あの長く美しい黒髪を種々の御統(みすまる)で結い上げて、革や鉄札を編んだ胸当てで身を鎧(よろ)い、羽織も裳も戦勝と守護の紋様がふんだんにあしらわれた戦装束を纏い翻して。更に耳にも手足にも常の倍もの飾りを嵌め、垂らし、胸と腰にはあの神器の玉と剣を混ぜて、数種の武具を携えていた。

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