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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第18章 垂る穂
「また、ここに……お前と、神依様と……二人揃って戻るまで、俺は絶対にお前を許さないからな……」
「……」
それだけを言うと項垂れて、後は涙を流すだけになってしまった男のその手には、あの不恰好な水晶の紐飾りが結ばれていた。日嗣はその飾りに触れ、黙したまま紐をほどくと自らの手首に巻いて結ぶ。
「……、何……を」
「禊。お前の忠節も、共に私が預かろう。……神依を、護ろうとしてくれたのだろう。……ありがとう」
「……っ……、……、……はい……」
現の世で傘を、夢の中で穂を差し出してくれた男が身に着けていたもの。同じものが童の腕にも結ばれていた。それが神依も含めた三人の、何の絆であったのか──日嗣はもう理解していた。それを預かる意味も、奪う意味も。けれども、もう迷う時、恐れる時はとうに過ぎていた。
 そして立ち上がると、一度だけ玉衣と大兄に目を遣る。けれどそれらにはもう何も語らず、振り向かず、猿彦と伍名に向き直った。
 ──遠い日のことだった。
 ──“私だって、好きでこの顔で生まれたわけじゃないわ!”
 それは確かに、一時は日嗣の心を揺るがした。けれども──その少女は“御令孫”という誰かの幻の背を追い、一人駆け出していってしまった。
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