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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第18章 垂る穂
「なあ、猿彦様──俺、なんでこんなことになっちゃったんだろ──俺はずっと、一ノ兄と姉ちゃんを見てなきゃいけなかったのに、なんで、……なんで、こんなことになっちゃったんだろ」
「チビ……」
「一ノ兄。姉ちゃん、大丈夫だよな? ……戻ってきてくれるよな?」
「……」
それに禊は答えない。ただ代わりに、怒りと哀しみと、切実に何かを乞い願うような悲痛に満ちた眼差しが日嗣に向けられ、それを真っ正面から受け止めた日嗣はただ一度……童の頭をゆっくりと撫でると、静寂のあまり誰にでも聞こえる声で、笑みさえ浮かべてそれを告げた。
「……俺が根の国に降りる。だから、……心配はいらない」
もう、心は決まっていた。
「……っ」
人々が驚きに息を呑む。けれども禊だけは己の無力さに憤り、その役目が自分ではない悔しさに歯をくいしばり……しかし今はそれさえも、目の前の男に全力で託す。
神も人間も関係ない。ただ一人の男として空いた手で思い切り日嗣の胸ぐらを掴めば、日嗣もまたそれを受け入れて、恋敵だったはずの男の言葉を待った。
「……禊」
「絶対に……許さない」
その声は、勢いだけは吼えるように──何かを自分に言い聞かせるように、引き絞った唸り声で。
「チビ……」
「一ノ兄。姉ちゃん、大丈夫だよな? ……戻ってきてくれるよな?」
「……」
それに禊は答えない。ただ代わりに、怒りと哀しみと、切実に何かを乞い願うような悲痛に満ちた眼差しが日嗣に向けられ、それを真っ正面から受け止めた日嗣はただ一度……童の頭をゆっくりと撫でると、静寂のあまり誰にでも聞こえる声で、笑みさえ浮かべてそれを告げた。
「……俺が根の国に降りる。だから、……心配はいらない」
もう、心は決まっていた。
「……っ」
人々が驚きに息を呑む。けれども禊だけは己の無力さに憤り、その役目が自分ではない悔しさに歯をくいしばり……しかし今はそれさえも、目の前の男に全力で託す。
神も人間も関係ない。ただ一人の男として空いた手で思い切り日嗣の胸ぐらを掴めば、日嗣もまたそれを受け入れて、恋敵だったはずの男の言葉を待った。
「……禊」
「絶対に……許さない」
その声は、勢いだけは吼えるように──何かを自分に言い聞かせるように、引き絞った唸り声で。

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