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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第18章 垂る穂
素戔鳴はそれを最後に猛々しく笑うと、再び手の一振りで突風を巻き起こす。
 その勢いに皆が袖で顔を庇い、またそれを下ろした時には……既に、その神は神依と共に消えていた。後に残されたのは数人の神と生気の失せたような巫女や禊、寄り添う傷付いた兄弟と、……雷に打たれて気を失った玉衣に、それをなおいとおしそうに胸に抱く大兄だけだった。

***

 「……孫──」
ややあって、猿彦が虚空を見つめて佇む友に声を掛ける。それはいろいろな感情を含んだいつもの短い呼び名だったが、付き合いの長い二人には充分だった。
 日嗣はゆっくりと目を閉じ数秒、何も応えず禊と童の元へ歩むと、その前で膝を折る。兎神がそれを見上げれば、大きな手が優しく頭を撫でてくれた。
 「……事情は聞いた。俺のせいで、……すまない」
「日嗣様……」
「兄、ちゃ……」
それを言いかけた童は残された右目からぼろぼろと大粒の涙を溢し、日嗣と、日嗣の後ろに控えていた猿彦を見て泣きじゃくる。
 堪えていたものがもう留めようもなく溢れてきて、どうしようもなかった。大事な姉を護ろうとして、洞主に切りつけられた瞬間から……瞳の痛みの奥で、ずっとずっと思っていたこと。
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