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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第18章 垂る穂
 けれども女達から忌み嫌われ、肌を爛れさせて死地にあるその姿はまさにその神の様を想起させて、誰もがそれを疑えない。それが忌まわしいことなのか、何か違うことなのか……その判別さえできなかった。
 だが日嗣は戸惑う人々の中でただ一人、
“──恋を、しなさいって”
あの緋色の海で見た赤い瞳と耳慣れない声をその脳裏に思い描き、何をも疑わず──今はただただ死地にある少女を恋(こ)い、目一杯にすがる声を張り上げた。
 「──お待ち下さい、お祖父様!! 彼女を……神依を、連れていかないで下さい……!!」
日嗣の父はかつて、素戔鳴が天照の玉の緒から生んだ神だった。素戔鳴もまたそれを知り、その若き神に空から向かい合う。
「神依は──神依はまだ何も成していない、これから共に成すはずだった、私達はまだその途上だったのです! 二人並んで語り合うのも歩むのも、寄り添って触れ合うのも──その巫女がいなければ、私が神として、男として満ちるあらゆることが叶わないのです……!! 死して後に満ちる幸せでは遠すぎる、今の私ではそれまでの孤独な生を耐えられない! だからそれはどうか──どうか、この淡島にて!! そも、それを私に唆したのは他でもない、貴方の母だというのに──何ゆえその子たる貴方が、それを半ばで刈り取るというのですか!!」
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