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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第18章 垂る穂
しかし素戔鳴から返ってきた言葉は、月読と共謀していたはずの伍名でさえ理解できないもの。
「加えてこの通り、娘の魂は既に肉より離れかけておる──。後は黄泉路(よみじ)の旅人なれど、この娘は我が母、伊邪那美の巫女でもあるからな──余が直々に、“根の国”に連れて参るのよ」
「げ、原初の女神の……巫女……? その子が……!?」
 その言葉のどこに驚いていいのか、もはや日嗣以外の人間には判らなかった。
 ──最高神、天照を生み出した偉大なる男神と共に、あらゆる命を創り出した原初の女神。けれども火の神を生み、その火傷で命を落とし……、死者が赴く黄泉国(よみのくに)──地の底にあって根の国とも呼ばれる世界で、再会した男神と最後には呪いの詞を交わして決別、忌まわしい存在になり果てた死の女神。
 もちろんそこに在る誰もがその話を知っていたし、巫女達はその時々の洞主に手を引かれ岩屋の祭壇に詣でてはいたが……。
 ……誰も、信じてなどいなかった。
 神々からは穢れの象徴として忌み嫌われて避けられて、あまりに遠い時の彼方の出来事に現実味も無く、人からは記憶の外に追いやられて。そんな生死の垣根を隔てて歴史から消えたはずの神の……その巫女とは一体何なのか。
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