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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第18章 垂る穂
 そしてそれにも気が済むとぐるりと辺りを見回し……中でも特に傷付いた三人の姿を見定めると、大仰にそちらへ歩みを進める。
 顔半分を血に赤く染める子供、自らも傷付きながら左右の腕でその子供と主を抱き、庇う青年。そして──。
「素戔鳴……様……?」
「余は堅苦しいのは好かぬ故、礼は要らん。それが神依と申す巫女か」
「は……はい」
素戔鳴は禊と言葉を交わすと、無惨な姿となった少女をじっと見つめ──やがて幾重にも巻かれた自らの玉の緒を引き千切ってしゃがむと、それを少女の体に巻きつけた。そして流れのまま、禊から引き剥がすように軽々と、片手で少女を抱き上げる。
「この娘は余が貰っていく」
「お、お待ち下さい、それは……っ!!」
何かしらの救いを願ってそれを見守っていた禊は慌てて神にすがるが、神はそれを聞き届けず、禊の手が届かぬ宙へと戻ってしまう。
 すると今がその時と言わんばかりに池から子龍が飛び出してきて、近くにいた人間を踏み台にして高く跳ねると、やっと手の届いた素戔鳴の足をよじ登って神依の腕に巻き付いた。
 そしてその顔を覗き込むようにして身を寄せるが、神依は何の反応も返さない。ただ無惨にも、玉衣に切られた髪の房がぱらぱらと舞った。
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