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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第18章 垂る穂
 天照は急ぎ玉飾りを外してそれを依りに家屋に結界を張り、その“嵐”が自分に近付けぬようできる限りの策を施すが──それでも恐怖を拭い去ることはできない。
 やがて風が弱まり塵や埃が収まってくると、稲妻と共に降りてきた神が、ついにその姿を顕現させた。
 「──お久しゅうございますなあ──姉上! また少し見ぬ間に随分とお若く、お美しゅうなられて!」
それは天照の狼狽をからかうように、宙から真っ先に彼女をその視界に捉えて吼えんばかりに言葉を繋ぐ。そしてその清狂の神に、天照は顔を歪めて批難がましくその名を──
「ス……素戔鳴(スサノオ)ぉ~~ッ……!」
自らの、もう一柱の“弟”の名を、呼んだ。

***

 その男神は誰の目にも豪快に、また荒々しく映っていた。
 飾りも衣も豪勢であったが無造作で、着崩された着物の隙間からは隆々とした筋が覗いている。そしてその露出した肌には手にも足にも刺青のような隈取りがなされ、より一層その厚さとしなやかさを際立たせていた。
 また伸びるに任せ、自由きままに風に靡く髪は唐獅子が舞うが如く、腰に差す種々の刀は持ち主に似て、理性を宿したまま美しく、壮烈に牙を剥く白い大蛇のようだった。
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