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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第18章 垂る穂
 ただ単に地より天へと昇ってくる、その前触れに過ぎないのだが──その嵐の大きさは、そのままその神の持つ強大な力を示している。
 そして“それ”が現れるとき、天照はいつも心の平穏を脅かされていた。
 神としてもその威は拮抗し、“姉”としても思うように手が付けられず、女としてはただただ単純に恐ろしい。
 “それ”は稲をなぎ倒す嵐の如くあって、中性的な月読とは異なり、まるで本来添うべきは自分の方だと言わんばかりに雄臭く、故に粗野で、乱暴で。
 遥か昔、気高き父より穢れた母を選んだくせに高天原に戻り来て、そのときも天照は謀叛を疑い武装までして対峙したが、“それ”は契りにも似た儀式で天照の玉飾りより子を生み出すと、その儀式を以て擬似的な夫婦になること、またそこから高位の神が生み出されたことを自身の心の潔白の証しと押し通して、逃げた。
 そして天照にもまたその巫女達にも言葉にできない散々の狼藉を働き、結局高天原を追放されたが──とにかくそういう前科を持ち、文字通り神をも恐れぬ振る舞いを平然とやってのけるその神は、権力でも力でも天照が御せない唯一の神であり、もうはなから関わり合いになりたくないのだ。
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