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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第18章 垂る穂
 玉衣の瞳にはかつて愛した男神の、見たこともない朱印だけが映っていた。
(……そうよ。これがあるからいけないんだ。これがあるから、思い通りにならないんだ。……これがあるから……!)
ならばぐちゃぐちゃに切り裂いてやればいい。削り取ってやればいい。
 もはや妄執の鬼と化した玉衣は、神依の右肩目掛けて刃を振りかぶる。
「──神依様ああッ!!」
「──なりません! 玉衣様、玉衣様ァッ!!」
その間際二人の禊の叫びが重なり、玉衣もその男達の声に一瞬動きを止めるが……しかしもう遅かった。
 それが振り下ろされる刹那──
「玉衣様──!!」
まるでそれを避雷針にしたかのように空を裂く紫電が落ち、玉衣を襲った。


【3】

 それと共に島には爆風が起こり、そこに在った巫女も禊達も皆等しく床や地に投げ出された。
 巻き上がる暴風の音が耳に響き、砂煙に視界は白く染まり、一体何が起きたのか誰にも分からない。
 「こ──これは……」
その中で一人、天照はその雷(いかずち)の正体を知りがくがくと震え後ずさった。
 砂塵の隙間から見える幾つもの渦を巻く雲海、轟々と音を立て鳴動する大地……天地を揺るがすその嵐は、ある神の来訪を報せる先駆け。
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