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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第18章 垂る穂
そう叫びながら、神依の髪を鷲掴みにすると──手にした剃刀を引き、ぶちぶちと音を立てながら何度も、何度も千切っていった。
 それは、先ほど巫女達が漁っていた化粧箱からこぼれ落ち、玉衣が拾った……最後の悪意だった。
 「──ぁ、あ゛──あ゛あ゛ぁっ!!」
「姉ちゃん! 姉ちゃんッ!! ──やめろぉおッ!!」
「邪魔をするでない!!」
その痛みに、今度こそ渇いた喉を裂き声を上げる神依。そしてその凶刃を止めようと間に入った童が顔面を斬りつけられるのを見て、巫女達はようやく事の重大さを悟り青ざめ、気を失い、或いは悲鳴を上げて部屋の隅に後ずさった。
 「お──愚か者が……!」
そしてその耳をつんざくような絶叫に振り向き、その所業を見てしまった天照までもが袖で口元を覆い恐怖に震えおののく。
 この場で唯一の神たる天照には、人には見えぬ、玉衣に巻き付く狂った愛憎の淀までもが視えていた。それは長年動かぬ水が腐り、泥と化した汚ならしいもの。異臭を放ち、細くうねる蟲を混ぜた泥でできたおぞましい蛇と……美しい女の体を併せ持った、異形の穢れだった。
 「はあ……はあ、あ、はは、ふふふっ」
そして地に伏した神依を見た玉衣は歪んだ笑みを浮かべ、更なる追撃を企てる。
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