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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第18章 垂る穂
 「……」
神依はその声に聞き覚えがあった。汚い自分を撫でてくれる、とても優しい指先にも覚えがあった。
 それは初めてこの世界に来た日のこと。何も分からず、不安だった自分を慈しんでくれたもの。
 彼女がそれを忘れてしまっても……自分はずっと覚えている。
 今もあの時と同じように、濡れた前髪を優しく脇にどけてくれて。
 (……もう、いいの?)
神依は今にも眠ってしまいそうな混濁した意識の中で、その指先だけにすがって思う。
 何だかさっきまで、すごく悪いことをして、すごく怒られていたような気がしていたのだけれど。もういいのだろうか。もう、許してもらえたのだろうか。
 それを思えば何故か視界が滲んで、次の瞬間つうっと一筋涙が頬を伝った。
 「……ぉかぁさん」
……私は何か悪いことをしましたか。もういいのですか。また優しい母に戻ってくれるのですか。
「ああ……!」
そんな問いかけのような一言に、玉衣は思い切り神依を抱きしめ、
「──私はお前など生んでいない!! お前は私を裏切った! お前は私の愛しい人を奪った! お前は私の子じゃない、私はお前の母なんかじゃない、洞主なんかじゃない──!! お前と同じ、同じなんだあァアァ!!」
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