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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第18章 垂る穂
玉衣はおもむろにそれを袖に隠すと、ゆらりと立ち上がる。振り返れば、先程と比べ庭先はがらんとして……何か忙しなく、男達が何事か言葉を交わしながらあちこちを行き交っていた。きっともう本当に、誰も、自分のことなど気にも留めていないのだろう。
 玉衣は天照がそうしたように衣を引きずり、履き物も履かずに庭に降りる。
 「洞主──」
しかし禊はその異変にいち早く気付いて、自身を支える禊達を振り払ってそれを追おうとするのだが、深く傷付けられた足が言うことを聞かず再び地に手を着いてしまった。
 顔を上げれば、自分の思いをそのまま受け取ってくれたように弟がその小さな体で主を庇い、険しい視線で洞主を牽制している。
 また大兄もそれをぼうっと眺め、口の中で玉衣様、と呟いた。その呟きが何だったのかは分からない。かつてあんなにも……それこそ目の動き一つで何を考えているのか分かるほど深い繋がりを持っていたのに、今の大兄には玉衣が何を考えているのか微塵も分からなかった。
 玉衣は童の憂いを他所に神依の前に跪くと、ゆっくりと手を伸ばしその焼けた頬を撫で、また頭を撫でた。
「……神依、……すまなんだ」
それはとても悲哀に満ちた表情で。それはとても悲痛を孕んだ声の加減で。
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