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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第18章 垂る穂
それを考えてしまった玉衣は頭を振って無理に掻き消した。
そんなはずはない。それは、自分がなるはずだったもの。あの人には私しかいなかったはずなのだから。
──しかし天照はそれ以上を玉衣に告げず、玉衣ではなく神依に向き直る。そして再び、確かめるようにその頭をそっと撫でた。
「……お前の髪が美しゅうあったのは、日嗣がそう望んだからであったのだな……」
「……」
指先に感じる、優しい日嗣の神威の残滓。何かまじないが掛かったものを贈ったか、或いはこうして褥(しとね)の中で詞を紡いで愛でさすったか。
縄を解かれた神依は目こそうっすらと開いていたが、その瞳は虚空を見つめ、呼吸も弱々しく、答えが返ってくることはない。体を支える童も既に最悪の事態を思い描いて涙を浮かべていた。流したら本当にそうなってしまう気がして、我慢していた。
(──人の手では間に合わぬ)
それを判じた天照は、急ぎ踵を返す。
自分が怨まれるのはまだいい。今この娘を喪っては、また日嗣を同じだけの時──いや、今度はそれ以上の時を膿ませてしまう。何をしてでも、それだけは避けたかった。
(──馬鹿な女の性(さが)よ……何ゆえわらわは……、それに何ゆえ月読はこのような──いや……)
そんなはずはない。それは、自分がなるはずだったもの。あの人には私しかいなかったはずなのだから。
──しかし天照はそれ以上を玉衣に告げず、玉衣ではなく神依に向き直る。そして再び、確かめるようにその頭をそっと撫でた。
「……お前の髪が美しゅうあったのは、日嗣がそう望んだからであったのだな……」
「……」
指先に感じる、優しい日嗣の神威の残滓。何かまじないが掛かったものを贈ったか、或いはこうして褥(しとね)の中で詞を紡いで愛でさすったか。
縄を解かれた神依は目こそうっすらと開いていたが、その瞳は虚空を見つめ、呼吸も弱々しく、答えが返ってくることはない。体を支える童も既に最悪の事態を思い描いて涙を浮かべていた。流したら本当にそうなってしまう気がして、我慢していた。
(──人の手では間に合わぬ)
それを判じた天照は、急ぎ踵を返す。
自分が怨まれるのはまだいい。今この娘を喪っては、また日嗣を同じだけの時──いや、今度はそれ以上の時を膿ませてしまう。何をしてでも、それだけは避けたかった。
(──馬鹿な女の性(さが)よ……何ゆえわらわは……、それに何ゆえ月読はこのような──いや……)

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