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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第18章 垂る穂
 あと少しだったのに。どうして大兄は何もしないのか、どうして天照があの子の側にいるのか、どうしてあそこにあの人の髻華(うず)が転がっているのか、……どうして、あの子の体に、……。
 解りたくない。認めたくない。
 「あ……天照様……」
だから玉衣はまだそれを信じたくなくて、神に乞いすがるようにその名を呼ぶ。しかし天照はふと気付いたように玉衣達に振り返ると、何か不機嫌そうに顔を歪めた。
「お前らも散れ、目障りだ……!」
「どう……いう、ことです……」
「どうもこうも無いわ、まさか朱印が刻まれていたとは思いもせなんだ──それが日嗣に取ってどういうことか、お前達にも分かるであろうが……!」
「……そ、それは……」
 玉衣は、再びそれを言われて押し黙る。
 花の女神との契り以来、悠久のとき妻を求めず巫女を……女を避けていたはずの男神が、その長い長い時を経て再び胸に抱き、寵愛の証を刻んだ少女。
 その契りは、頑なだった男神の心をほどき、癒し……きっとあの文に綴られていたような、愛と慈しみの言葉のもと結ばれたものに違いなかった。それは男神の凍てついた時間が、ようやく動き始めた証だった。
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