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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第18章 垂る穂
 ゆっくりとその頭(かしら)が垂れてきて、兎神と目線を合わせてくれる。
 それで兎神も必死に小さな体を伸ばし、龍に語った。自らの“家族”の危機を、龍に語った。
 早く報せて。あなたの父神様に、早く!
『──…!』
それで全てを知った龍の神は、その細い瞳孔を更に鋭く変えて目を見開く。そして兎神を浚うとその身を即座に潮(うしお)のようにうねらせ、竜巻のように水を巻き上げながら空に踊り出た。
 空気を裂き、襲い掛かるように朱の楼閣に突っ込んで。
 手刷りや柱を破壊し道をこじ開けると、父たる日嗣の神威を辿り楼閣の吹き抜けを上へ上へと舞い上がる。
 天地の境は龍の理には組み込まれない。建物から真白の虚空へ抜け、濃霧を突き抜けた先は──高天原だった。
 「……!! ……!」
その間、兎神は一体何が起きたのか分からず目を白黒させて、落ちないよう必死に鬣に掴まっていた。けれど空を泳ぐ途中……遥か下の方で一度、雷が落ちたような轟音の残滓が響いたのを聞いた。



【2】

 天照の様子が変化するのと同時に、小島の空は再び冬のものへと姿を変えていた。
 冷気を含んだ雲が気温を下げ、季節を勘違いしたのかいつの間にかほころんでいた庭桜の花のつぼみに、雪が触れる。
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