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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第18章 垂る穂
 そしてその空間には、あの小さな龍の気配にも似た神気が漂っていた。
 間違いない。龍の座する池だった。
「……!!」
兎神は心の中で必死にその龍を呼び、その場でぴょんぴょんと跳ねる。もし気付いてもらえないなら、この中に飛び込んでもいい。あの二人が興した神が、それを見捨てるはずがない。
 しかし兎神が数回跳ねると、水面はすぐに変化を見せた。ゆらっと銀(しろがね)の光を宿し、水影の中、流線を描いてうねる。
 そして徐々に水が盛り上がって鱗が輪郭を現し──それは兎神に水が掛からぬよう、少し遠いところで顔を上げた。
 「──……!!」
しかしそれが予想以上に大きくて、不意に“わに”のことを思い出してしまった兎神はぴゃっと後ろに跳ねて木の根の影に身を隠す。
 けれども龍の瞳と口元が優しく緩んで、その笑みが長い髭に伝って揺れて……その仕草が鼠軼のものとよく似ていたことに気付いた兎神は、おそるおそる龍の前に歩み出た。
 「……」
『──幼き神……獣の神。そなたからは、覚えある信仰の気配がする……我が母巫女の、繭玉が如く優しきものだ。……母に近しい、端の神か。いかがした』
「……!」
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