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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第18章 垂る穂
 「……」
それは今日、兎神が初めて聞く神依以外の優しい女の声だった。
 良かった、と少しほっとした。
 あんなに優しい巫女が、どうして嫌われるのか分からなかった。ひとりぼっちは本当に悲しいのに、みんなに嫌われているんじゃないかと思った。
 ──だけどそうじゃなかった。ちゃんと、好きになってくれる人がいる。
 巫女達はただ一人のために花を集め、集め、集めては露台の社に重ね合わせていく。今まで半ば信じていなかったような神に向けて、どんどん、どんどん花を供えていく。
 兎神はそれに背を向け、また一歩ぴょんと奥へと進む。
 そのとき……しゃらん……、という、綺麗な鈴の音がどこかから聞こえてきた。
「……!」
とても澄んだ、心の奥がざわざわとする鈴の音。
 それは自分が神であるということを、より強く思い起こさせてくれる不思議な音色の鈴だった。よく耳を澄ませると、確かに奥の方から、もう一度だけ聞こえた。
 「……!」
行かなければ。
 そうして幾つかの川を飛び越え、兎神が辿り着いたのは大きな大きな池だった。雲海の空が下から水を突き抜けて、梢がとても明るい。石畳が少し残っていて、その隙間からは稲穂が頭を垂れていた。とても優しい、秋の色。命の色。
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