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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第18章 垂る穂
 そう思って、兎神は震える足に力を入れると、
「……!」
ぴょん、と──跳んだ。

***

 それからはもう夢中だった。
 兎神はその大きな耳で、人ならざるもの達の囁きを聞く。そしてそれに導かれるように、分かれ道を選ぶ。
 兎神は迷わない。巫女が結んだ道の神との縁は、その神の誓い通りに行く道を開いた。
 そしてあれほどまでに恐ろしかった跳び石はしっかりと空と海の境界を繋ぎ、その均衡を崩してまで兎神を襲うことはない。いつしか兎神は一つ跳びにも二つ跳びにも石を渡り、駆けていた。
 ──息を切らして駆け続けると、やがて水と木とで出来た広い空間に辿り着いた。
 「……」
入り組んだ木々の枝に、複雑に絡む根。細いせせらぎが交差する森。全身の毛がふわっと立つくらい美しく、厳かで。そこに在る端神達はとても静かに葉の影、水の音に紛れて、ひっそりと息づいていた。
 特別な場所。龍の棲む森。
 兎神も、あの巫女と男神が興した神のことは知っていた。
(龍の神様──)
もしも「母」の危機を知ったなら、龍神はそれを助けてくれるだろうか。それを「父」に報せてくれるだろうか。
 人と神の世の理、しがらみの外に存在を許された龍ならば……。
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