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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第18章 垂る穂
 ドキドキと波打つ心臓の音が、怖い人達に聞こえてしまうかもしれない。だからゆっくりと、そうっと祠から脱け出して、竹やぶに隠れるように静かに跳ねて、その子のところへ向かう。
 「──あれ? 兎神様?」
そうして兎神は、かつて神依と禊を止めようとした時のように童の前に立ちはだかった。
 何とかその歩みを止めようと、何度追い越されても何度も追い抜いてその前に立ちはだかった。
 だが、彼は自分の声を聞くことができなかった。
 そして自分もまた、異変に気付いて駆け出すその子を追うことはできなかった。──怖かった。
 「……」
童が駆け出した後には、子龍の餌となる水晶や水色の石、金属片と、可愛いけれど少し傷のある、木彫りの飾り玉が散らばっていた。
 よく見るとそれは紐を通す穴があって、兎神はそれが何なのかすぐに分かった。きっとこれは、この頃家にこもることが多かった巫女のため、あの子が特別に貰ってきたものに違いなかった。
 (──鼠軼様……)
鼠軼様の言うことは、全部全部“ほんとう”だった。
 巫女は優しく語りかけて、怪我を心配してくれた。禊は美味しい人参や林檎をくれた。あの子は、家を造ってくれた。
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