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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第17章 父が歩んだ道
 苦悶の声を漏らし暴れる姿は、陸に打ち上げられて酸素を求めて喘ぐ魚。しかし口を開けば開いたぶん体内は熱風に焼かれ、暑さと酸欠によってもたらされる目眩に吐き気を催す。もう吐くものもないのに何度も何度もえづくその姿に、童は反射的に駆け出した。
「姉ちゃん!!」
「ぅあ、……だ、め……かはッ」
それを霞んだ視界に映した神依は息も絶え絶えにこちらに来るなと告げるが、もう手遅れなこともどこかで知っていた。
 兄に似て、本当に優しい子だった。童が自分を敬称で呼ばないとき、神依に取ってもその子は、掛け値なしに──大事な弟だった。
 「姉ちゃん! 姉ちゃんッ!! 一ノ兄──」
神依に駆け寄った童は何が起きているか分からず、泣き出しそうな顔で男達の中に自らの兄を求めて庭を見回す。そしてその姿を認めると更に泣きそうな顔を作った。しかし禊は気丈に目で一喝し、落ち着くように諭す。童もそれを受けて、今何かできるのは自分だけだと気持ちを奮い立たせて物言いたげな兄の視線を追った。
 それに示されるまま神依の首元を見ると、濡れた髪に紛れて一本の細い革紐が見える。
 それは皮を剥がされたことを怨む獣の怨念の如く細い首にしつこく巻き付き、真っ赤になった肌を引き絞っていた。
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