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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第17章 父が歩んだ道
 その視線に、巫女はまた何を言っているか分からない程に小さな声でもごもごと答え、のろのろと何かを手渡した。それは小さな、秋の模様が入った巾着だった。
 「……」
「天照様?」
幼い小さな手がその巾着の口を開くと、ふっと大きな目が見開く。そして一瞬でその雰囲気が変わるのが肌で感じられて、玉衣は小首を傾げもう一度背後の巫女達の一群れを見遣った。文を漁っていた者達は同じく、不思議そうに顔を見合わせ何を見付けたのかひそひそと囁き合うだけだったが、巾着を差し出した娘を含むもう何人かは、皆怯えたような顔をして目を泳がせるだけだった。
 と、その時──
「……み……神依、様……?」
「……っ、」
そのわずかな静寂の中、仕事から戻った童が門の先に姿を見せて、その怯えたような子供の声を聞いた神依は弾かれたように体を起こし、絶叫した。
「──来ちゃ駄目!! 逃げてえッ!!」
「──逃がすな! 捕らえよ!!」
 しかしそれは玉衣も同じ。子供とはいえ、逃がすわけにはいかなかった。逃がして他の神──それが人の姿をしていない神であっても、知られては堪ったものじゃない。
 「みよ……神依様……、でも」
童は二つの女の声に、躊躇する。
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