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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第17章 父が歩んだ道
(……できない)
できないよ……。
たったそれだけを思った瞬間、もう忘れていた涙が一気に溢れ出した。
もう渇いて無くなってしまったかと思った涙は、虐げられていた時よりも多く流れて頬を伝っていった。今日まで、いろいろと辛いこともあった。でもその度に垣間見えた誰かの優しさの方が、ずっとずっと深く鮮明に神依の心に残っていた。塵や嘲笑を投げつけられる痛みよりそれを失う痛みの方が、遥かに神依の胸を締め付け涙を誘った。
そしてそれを見ていた天照にも、その涙が決して屈服のものでないことが理解できた。少なくとも──“まだ”、娘は正気を保っている。
「鼠の後追いを選んだか。本当に馬鹿な娘──誰も助けになど来ぬというのに」
「ふふ。何やら、今日は高天原では国津神の集まりがあるとか──」
「その辺は抜かり無い。ちょっとわらわが愚図れば、大半の神は言うことを聞く。皆、あんなふうに焼かれるのはまっぴらであろうからな──わらわには甘いのじゃ」
神依の希望が潰(つい)えぬよう声を潜めて語り合う二人の女は、ではもう少しの時間をどうやって楽しむか、そんな話を巫女達ともし始める。
できないよ……。
たったそれだけを思った瞬間、もう忘れていた涙が一気に溢れ出した。
もう渇いて無くなってしまったかと思った涙は、虐げられていた時よりも多く流れて頬を伝っていった。今日まで、いろいろと辛いこともあった。でもその度に垣間見えた誰かの優しさの方が、ずっとずっと深く鮮明に神依の心に残っていた。塵や嘲笑を投げつけられる痛みよりそれを失う痛みの方が、遥かに神依の胸を締め付け涙を誘った。
そしてそれを見ていた天照にも、その涙が決して屈服のものでないことが理解できた。少なくとも──“まだ”、娘は正気を保っている。
「鼠の後追いを選んだか。本当に馬鹿な娘──誰も助けになど来ぬというのに」
「ふふ。何やら、今日は高天原では国津神の集まりがあるとか──」
「その辺は抜かり無い。ちょっとわらわが愚図れば、大半の神は言うことを聞く。皆、あんなふうに焼かれるのはまっぴらであろうからな──わらわには甘いのじゃ」
神依の希望が潰(つい)えぬよう声を潜めて語り合う二人の女は、ではもう少しの時間をどうやって楽しむか、そんな話を巫女達ともし始める。

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