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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第17章 父が歩んだ道
 自らの思いに決して間違いは無い。
 最も才を持ち、最も尊ばれ、最も愛されるはずの巫女。最も愛したはずの少女が汚されていくのは耐え難い屈辱であり、恐怖だった。
 そしてそこに在る全ての人間達の行いを眺めていた天照は、その小さな手には余るほどの盃で酒を煽ると、上機嫌ににこりと笑って口を開いた。
「──よきザマじゃ」
「……」
神依が顔を上げれば、天照はなお嬉しそうに笑みを深める。
「普通の乙女ならばよよと泣いてうなだれて、赦しの文言と自らの矮小さを嘆く文言を卑しき言葉でぼそぼそと告げるところであるぞ。惨めったらしく、土下座のように地を眺めてな──ほれ、お前には良き手本がおうたろう」
「……」
小さな桃色の金平糖が、禊の眼前に転がってくる。
 それは、余りに愛らしい天照の悪意だった。
 神依の目にもそれが見て取れて、禊が傷付けられたことと洞主の物言いに沈んでいたはずの心が、今度は哀しみと怒りという真逆にも思える気持ちでいっぱいになる。
 神依はもう、知っている。禊達がいつも、どんな気持ちで頭を垂れてきたか知っている。そして神依もまた、暴力に支配されて頭を下げることがどういうことか……一度嫌と言うほど月読に叩き込まれて、知っていた。
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