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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第17章 父が歩んだ道
その直後、獣の咆哮のような禊の声が響き神依の心臓を震わせる。瓶を抜いた瞬間から血があふれ、その惨烈な光景と喉すら裂きそうな男の声に、神依はもう何を訴えることも出来ずかちかちと歯を鳴らして膝から崩れ落ちた。
 しかし大兄は何事も無いように手巾を取り出すと傷口を覆い、慣れたように足の数ヶ所を押さえると自らの玉緒をほどいてそのままきつく縛り上げる。呪力の宿る玉飾り。すぐには効かぬが、死なない程度にはこれで収まる。
 そしてもう一度瓶を拾ったところで、
「──もうよいよ、大兄」
玉衣に呼び止められて、顔を上げた。
 立ち上がった大兄の衣は禊の血のほとばしりに染まっており、歓声とも悲鳴とも取れない女達の声が上がる。しかし少なくとも、玉衣の顔は笑っていた。
 「玉衣様──しかし」
「前座には充分であろ。天照様が御所望はあくまでもそちらの娘。邪魔立てせねば、それでいい」
「しかし、これはもはや鎖の千切れた狂犬です。確実に封じるならば腕も」
「その狂犬の心を慰める、程良き薬も奥社にはあろ。夢心地のまま、何も思わず、何も考えずに居られる。事が終わりまた元の大弟に戻したら、私が再び召し上げるゆえ許しておやり。お前もその方が嬉しかろうて」
「……かしこまりました」
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