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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第16章 白日の下
 その大兄の苦悶の唸り声は、ある意味では最も誰も傷付かない、最も優しい選択であったかもしれない。
 神依は元より実ることの少ない初恋を諦め、時間は掛かったかもしれないが、いつかは他の少女達と同じように友を得て、その実らなかったありふれた恋を語り、決して手の届かない男神に憧れる心を共有し、平穏な日々を送ることができたかもしれない。実らぬ恋だったとはいえ、その一時の男神の加護の下に、別の男神と新たな恋を育み、今度こそその熟れた実をもぐことができたかもしれない。
 禊もまたそんな主と共に在って、その主が自身の僕(しもべ)と同じものを分け合い、身に付けるような──それだけの優しさを持っていたなら、淡い想いを実らすに足る時間を得られたかもしれない。男神に拐われたとて、その恋を汚されることなく、側に侍ることができたかもしれない。いつかは──神の気紛れに、己の恋の種を芽吹かす機会を得ることが、できたかもしれない。
 玉衣も今まで通り変わらず、淡島の巫女達を……少女達を見守る良き洞主、良き母で在れただろう。母であるぶん女として愛されなくなったその孤独を、自分とよく似た巫女を慈しみ、育て上げ、そして慕われて理解されることで、癒せたかもしれない。
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