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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第16章 白日の下
しかし背後には誰も居らず、その空(くう)を見上げれば……紅の影が、陽炎のようにゆらりと滲んでいる。それは光の粒を帯びて徐々に形を成し、進貢の赤き花をそのまま織り込んだような着物を纏う、幼い少女に具現化した。
その出で立ちはまるで、特別な日のために飾り付けられたお人形さん。けれども彼女は決して人形ではなく、毎日をその姿で過ごすことを許され、権力を誇示するにあらゆる宝玉を纏って、なおそれを邪魔そうにあしらえる者。
「なんじゃその面(つら)は。花を寄越し、わらわを呼んだのはそなたであろうが」
「こ──これは──なんという……、あ……天照様……」
狼狽して、ただ取り繕うように頭を伏せるだけの私に反し、彼女は悠然とその場に在って私に囁く。
「のう──玉衣よ。わらわにもその、神依……とかいう、端の巫女の話をしてはくれぬか? その──」
我が弟を……我が背をたぶらかし、我が孫に吸い付く女蛭の話を。
「……」
そして私はやっぱり、その時──ざまあみろと心の奥底で思った。
私の身も、私の清らかな想いも、秘めたる心の泥土も、全てあの人のためのもの。やはり私はあの人のために在って、あの人に不必要なものを絶つだけの力と、運命があるのだ。
その出で立ちはまるで、特別な日のために飾り付けられたお人形さん。けれども彼女は決して人形ではなく、毎日をその姿で過ごすことを許され、権力を誇示するにあらゆる宝玉を纏って、なおそれを邪魔そうにあしらえる者。
「なんじゃその面(つら)は。花を寄越し、わらわを呼んだのはそなたであろうが」
「こ──これは──なんという……、あ……天照様……」
狼狽して、ただ取り繕うように頭を伏せるだけの私に反し、彼女は悠然とその場に在って私に囁く。
「のう──玉衣よ。わらわにもその、神依……とかいう、端の巫女の話をしてはくれぬか? その──」
我が弟を……我が背をたぶらかし、我が孫に吸い付く女蛭の話を。
「……」
そして私はやっぱり、その時──ざまあみろと心の奥底で思った。
私の身も、私の清らかな想いも、秘めたる心の泥土も、全てあの人のためのもの。やはり私はあの人のために在って、あの人に不必要なものを絶つだけの力と、運命があるのだ。

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