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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第16章 白日の下
 彼女が私の手を離した時。
 ……裏切られた。
 彼女が“禊”の胸に顔を埋めた時。私にはもう、二度と返らない時間。
 彼女がこの衣に包まれていた時。欲しい。
 彼女を迎えにと、八衢の神が駆け込んできた時。あの人は? 二人きりで何をしているの?
 (…………)
なんだ、私は最初から──
 ──“愛情”など、あの子に持ったことなど無かった。一度だって無かった。

 きっと、そう認識できたのは、巫女達の噂を聞いたからかもしれない。
 巫女達は各々に通ってくる神々を利用していろんな話を持ち込んではお喋りに興じている。また大兄も、何か揉め事があった時にすぐ事態を把握できるよう、常日頃から彼女達の噂話にはそれとなく耳を傾け、巫女同士の関係を探ったり情報を仕入れているから、私の耳にもすぐにその話が届いてきた。
 何でもあの人と月読命が、激しい言い争いをしたらしい。それであの人は謹慎を受け、淡島に降りられないと。
 ……彼女が頬に月読の印を得た頃。
 何故あなたが、それを怒るの。
 何故あなたが、それを気にするの。
 何故あなたが、あの子を気にするの。
 ……私の方がずっとずっと綺麗だったのに。あなたに相応しい姿と心を持っていたのに。あの子のように、馬鹿でもなかったのに。
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