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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第16章 白日の下
 ……許せなかった。
 許せなかった……!!
 彼女が私にあの人のことを語ろうとした時。無知な子──馬鹿な子。どうして知らないの。どうして気付かないの。どうして分からないの?
 彼女が頬に月読の印を得たのを見た時。これでようやく、あの子をただの巫女に引きずり落とせる。ようやく──あの人から遠ざけられる。引き離せる!
 彼女が妻問いを拒んだ時。面倒はもう嫌。今はただ……誰でもいい、早く、売りたい。
 彼女が神々に求められた時。私にはもう、そこまで執着してくれる者などいないのに。
 彼女が龍神を興した時。私にはもう、神など信じられないのに。
 彼女が空の上で舞った時。私にはもう、……敵わない?
 舞い終わり、虚空に倒れ行く彼女があの人の腕に抱かれた時。
 ……どうしてあなたが手を伸ばすの。どうしてあなたが、優しく笑むの?
 彼女が他の巫女に貶められた時。これでいい。
 彼女の名を変えるよう、あの人に脅された時。これが、私が求めていた“時”だったのに。私だけが許された、妻問いのはずだったのに。
 彼女が舞巫女に選ばれた時。私にはもう、遠ざけられない。
 彼女が八衢から送り届けられた時。私にはもう、断ち切られた縁。
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