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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第16章 白日の下
 過去は過去。あの人は今はもう独神(ひとりがみ)に等しく、また皇子としてこの淡島に在るのだから。
 そんなことにこだわるより、傷付いたあの人の心を喜びや楽しみで満たして、二度と思い出さないようにしてあげたかった。
 私は歌舞や楽器をそれまで以上に習った。酒も香も盤遊びも札接ぎも、神が戯れに興ずるあらゆるものを習って、学んで、上達させていった。
 そしてそれ以外の時間は人知れず、あの人の潜んでいそうな場所を歩んでいた。
 ただあの人の黄金の瞳に、その名に相応しき太陽のような輝く瞳に私だけを映して欲しくて、必死だった。
 どこかから噂を聞き付けた洞主様には、それとなく止められた。あの神は巫女には絶対に降らないと言われた。
 もちろん、そんなことは百も承知だった。
 ──降るはずないじゃない。
 あの人は尊い人。天孫、日嗣。そんな人が並みの巫女に心を許すはずがない。
 そんなふうに私は巫女達の嫉妬も洞主様の憂鬱も何も気にせず歩き回って、日々の進貢ではその日ごと、広場の中で最も美しく咲き誇る花を捧げて、ある日ようやくあの人に出会えた。
 ようやくあの人に、口を利いて貰えるようになった。
 あの人は、何の興味も無さそうな素振りをしながら私の名前を覚えてくれた。
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