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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第16章 白日の下
何か慌てた様子の鼠軼が駆けてきたのは、その時だった。
 神依と禊は顔を見合わせ、庭の方へ向かい鼠軼を迎える。
 「鼠軼様」
「いかがなさいました」
神依は慌てて鼠軼を手に乗せ立ち上がる。
 先程ちょうど話題にのぼっていたその神は焦燥に息を荒げ、ゼエゼエと肩を上下させて小さな老体を揺らしていた。神依が労るように指先で背を撫でれば、鼠軼は少し落ち着いたようにゴクリと息を呑み、しかしすぐに切羽詰まった様子で──声を張り上げた。
「──早う──早うどこかへ身を隠すのじゃ!! 鼠英と蜘蛛神はもう隠した、龍の子よ、お主もはよ水に紛れよ!」
「え──」
まるで何かを威嚇するように全身の毛を硬くして歯を剥き出す様は普段の鼠軼からは考えられず、子龍は鼠軼の手の動きと共に弾かれたように神依の腕から跳びそのまま池に落ちる。
 もちろん神依と禊もあまりに尋常ではない鼠軼の振る舞いに、その空気を変え目配せを交わした。
 雲海も浮島も、庭から見える景色は何も変わらず長閑な様ではあったが──しかし禊には、何か神にしか分からない災禍が近付いているのだとすぐに分かった。
 その瞬間頭に過ったのは月読の一件で、禊は慌てて神依の肩を抱くと庭の奥へと進む。
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