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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第15章 文枕
それは神依にも日嗣にも残念なことだったが、それでも二人は文を交わし続けた。
その頃になると、日嗣の綴るものは神依をからかって遊んでいるように色めいた文言を増やしていたが、神依は神依でそれに怒ったふりをして跳ね返す楽しさも覚えていた。
けれども時にはお互いにありのまま、純な想いを確認し合って。素直に心を晒せば、相手からはよりいっそう澄んだ心がもたらされた。
そしてそれがあったからこそ、神依は進貢も続けていた。
「──神依、今日も気をつけてな」
「はい。ありがとうございます、鼠軼様」
「うむ……」
しかし、その日も鼠軼は些か不安そうに神依を見上げ、進貢へと送り出す。その傍らにはやはり鼠英が控え、ヒビの入った神威の珠に目を落としていた。
家と家主に与えられる加護は確実に薄れている。鼠英の目にも、神依にまとわりつく黒い靄のようなものが視えていた。
今日は珍しく早起きした子龍も一緒だったが、やはりそれを追い払うように小さな手で宙をかいている。
だがそうして地に落ちたそれは、なおうぞうぞと気色悪く蠢いて、神依の足跡を辿るように後を付いていった。
国津神達も折りを見て密かに祓ってはいたが、それは無尽蔵に人の深奥から湧き続ける。
その頃になると、日嗣の綴るものは神依をからかって遊んでいるように色めいた文言を増やしていたが、神依は神依でそれに怒ったふりをして跳ね返す楽しさも覚えていた。
けれども時にはお互いにありのまま、純な想いを確認し合って。素直に心を晒せば、相手からはよりいっそう澄んだ心がもたらされた。
そしてそれがあったからこそ、神依は進貢も続けていた。
「──神依、今日も気をつけてな」
「はい。ありがとうございます、鼠軼様」
「うむ……」
しかし、その日も鼠軼は些か不安そうに神依を見上げ、進貢へと送り出す。その傍らにはやはり鼠英が控え、ヒビの入った神威の珠に目を落としていた。
家と家主に与えられる加護は確実に薄れている。鼠英の目にも、神依にまとわりつく黒い靄のようなものが視えていた。
今日は珍しく早起きした子龍も一緒だったが、やはりそれを追い払うように小さな手で宙をかいている。
だがそうして地に落ちたそれは、なおうぞうぞと気色悪く蠢いて、神依の足跡を辿るように後を付いていった。
国津神達も折りを見て密かに祓ってはいたが、それは無尽蔵に人の深奥から湧き続ける。

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