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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第15章 文枕
もう一度小さな神々の力を借りて糸を新しく紡ぎ直すのも、染料を求めて冬野辺を歩き回るのも。
それはますますに巫女達の中で立場が悪くなった神依に取って、何よりも楽しく、心が休まるひとときだった。
氷風よりも鋭く冷たい囁きも、ここまでは届かない。
──神依は最初の文を読んでもらった次の日から、進貢に戻っていたのだ。
それは日嗣にも神依にも、同じくらい辛い朝と、文字と夢とで心を交わす、この上ない喜びに満ちた夜をもたらした。
ただ、二文字で終わる恋の言葉は一度も紡がれない。愛の言葉は紡がれない。代わりにたくさんの細やかで優しい未来を、二人の筆先は綴っていった。
***
神依。
神依へ。
お前がこの字を石の上に綴ってから、どれだけの時を共に過ごせただろう。今になって思うと、あの頃から俺の中にお前の存在があったように感じる。
今回、こんなことになってしまって、本当にすまないと思う。それから、この文が遅くなってしまったことも。その間、お前がどれだけ自分の手でその心を傷付けて過ごしていたか、想像するだけで胸が痛む。
彦から、体調が良くないとも聞いている。
それはますますに巫女達の中で立場が悪くなった神依に取って、何よりも楽しく、心が休まるひとときだった。
氷風よりも鋭く冷たい囁きも、ここまでは届かない。
──神依は最初の文を読んでもらった次の日から、進貢に戻っていたのだ。
それは日嗣にも神依にも、同じくらい辛い朝と、文字と夢とで心を交わす、この上ない喜びに満ちた夜をもたらした。
ただ、二文字で終わる恋の言葉は一度も紡がれない。愛の言葉は紡がれない。代わりにたくさんの細やかで優しい未来を、二人の筆先は綴っていった。
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神依。
神依へ。
お前がこの字を石の上に綴ってから、どれだけの時を共に過ごせただろう。今になって思うと、あの頃から俺の中にお前の存在があったように感じる。
今回、こんなことになってしまって、本当にすまないと思う。それから、この文が遅くなってしまったことも。その間、お前がどれだけ自分の手でその心を傷付けて過ごしていたか、想像するだけで胸が痛む。
彦から、体調が良くないとも聞いている。

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