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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第15章 文枕
 今すぐに会えない寂しさはあるけれど、確かにここにはまだその繋がりが残っている。その安堵と男の愛情に、神依はまるで我が子を抱くようにその箱を抱きしめた。
「神依様──」
良かった、と肩の力を抜く禊に、猿彦もまた一種の安堵感を持って応える。
「もし神依が読めなかったら、最初はお前が読んでやってくれ。返事は自由に書かせてやってくれて構わない。俺達は文字に頓着しねえしな」
「はい。どれほど紙がよれていようとも文字が滲んでいようとも、神依様の手と涙のままに。きっと日嗣様にも、文字よりそちらの方がお心が伝わるでしょう」
「……ああ」
そしてその短いやり取りの中、いつの間にか友を呼ぶ呼び方が変わっていたことに気付いた猿彦は、心からの感謝の念をこの青年に捧げた。
 この禊がいなければ、或いは結ばれなかった縁かもしれない。あの日、白砂の浜で抱いた少女の纏う神の衣は、きっとこの禊には針の筵(むしろ)で織られたような衣だっただろう。それでも途中で投げ捨てることをせず、胸に抱いてくれた。
 そうやってたくさんの想いを犠牲にして、たくさんの心に護られて絡み始めた神と巫女の縁。それを、彼ら自身がほつれさせてしまうのは、とても残酷で薄情なことだった。
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