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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第15章 文枕
「……山から切り出してきたばっかの石は、ゴツゴツしてたり、縦に割れて刃物みたいに鋭くなってたりして、危ないんだ。それを……少しずつ少しずつ、何度も石を確かめながら磨いて、角を取って丸くしてく。そしたら、……手に取ってもらえるだろ。どんな人にも、綺麗な石だって、見てもらえる」
「……日嗣様……」
そしてその童の言葉を聞いた瞬間、意図せず神依の目からぽろぽろと涙がこぼれた。
それは文箱の上にぽつぽつと落ち、神依はあわててそれを衣で拭うように胸に抱きしめる。その涙がどうしてこぼれたのか、自分でも分からなかったけれど──それは心が何かでいっぱいに満たされて、収まり切らずそのまま溢れてしまったもののような気がした。
あんなにも柔らかな線を描き、美しさを内に秘めた玉になぞられるそれが、別れの言葉であるはずがない。あんな姿を見られて──見てしまって。それでもきっとこれは、その女の心を傷付けないよう、何度も何度も言葉を選んで、その心の内を綴ってくれたものに違いなかった。それをようやく心の奥底から信じられて、その箱の向こう側にあるその姿が、存在が、切ないほどに恋しくて、愛しくて愛しくて堪らなかった。
「……日嗣様……」
そしてその童の言葉を聞いた瞬間、意図せず神依の目からぽろぽろと涙がこぼれた。
それは文箱の上にぽつぽつと落ち、神依はあわててそれを衣で拭うように胸に抱きしめる。その涙がどうしてこぼれたのか、自分でも分からなかったけれど──それは心が何かでいっぱいに満たされて、収まり切らずそのまま溢れてしまったもののような気がした。
あんなにも柔らかな線を描き、美しさを内に秘めた玉になぞられるそれが、別れの言葉であるはずがない。あんな姿を見られて──見てしまって。それでもきっとこれは、その女の心を傷付けないよう、何度も何度も言葉を選んで、その心の内を綴ってくれたものに違いなかった。それをようやく心の奥底から信じられて、その箱の向こう側にあるその姿が、存在が、切ないほどに恋しくて、愛しくて愛しくて堪らなかった。

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