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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第15章 文枕
上を向いたせいで頭からずり落ちそうな布を直してやれば、神依は一度寒そうに身震いしてそれを引き寄せた。山の方ではちらちらと雪も降ったらしい。
 手を丸めて息で温めれば、禊が優しく笑む。
「参りましょう、水辺は特に冷え込みますから。……後々のことは、皆でゆっくりと考えましょう」
「うん。……でも私、あの日に禊と童に言ったこと忘れてないからね。洞主様が仰ってた……勇気が出るまで、もうちょっと待ってて」
「はい。私達も、その支えとなれるよう努めて参ります」
そうして神依は禊の持つ提燈と、冬の澄んだ雲海の星明かりを頼りに家路へと着く。
 森を抜ければ今日は細い三日月が空に浮かんでいるのが見えた。もしもあの月の神に夜を見渡す力があるのなら、あの世界が洗われた日の夜もずっと自分達を面白おかしく追っていたのだろうか。
 或いはその行く先を唆し、誘(いざな)っていてくれたのかもしれないが、どちらか神依には判らなかった。

***

 「──あれ?」
そうして戻った先の我が家は、何故かまだ灯が点されぼんやりと明るかった。童が寝る支度を調えてくれているはずだったのだが、何だか賑やかな声も聞こえる。
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