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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第15章 文枕
【3】

 それから少しの後、水の森の龍神の祠の前に、花藻を供える神依の姿があった。帰りがけでもう夜も遅い時間だったが数日あいだが開いてしまったこともあり、神依もどうしてもそれだけは果たして帰りたかった。
 「きっと、斎水分神もお喜びになるでしょう」
「うん、だと嬉しい」
そのあと中央の社に進むことも考えたが、洞主の言う通り今は月読の治める夜の国で……それを思えば夜の進貢はなんとなく避けたいような気がして、結局稲穂に伸ばしかけた手は止めてしまった。
(……日嗣様)
遥か上の空を見上げるも、目に映るのは朱の楼閣から洩れる緋や橙の色にぼんやりと染まる梢だけ。
 「……もしここに来ることがなくなっても、禊と童はずっと一緒にいてくれるんだね」
「はい。巫女や覡がどのような生き方をしようとも、私達は常にお側にあるだけです。ただ叶うことならば……要らぬ騒ぎになる前に、日嗣様が貴女をお迎えにお降り下さればいいのですが」
「やっぱり禊は優しいね……でも本当に、馬鹿」
「それは、禊に与えられる最高の褒め言葉として頂戴しておきます」
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