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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第15章 文枕
「でも……、でも違うんです。私は……」
「神依……」
洞主は手を引くと、一つ小さく息を吐く。
「きっとそなたも、恋を知ったのだね」
「洞主様──」
その思わぬ言葉に神依が顔を上げると、一直線に洞主と視線が交わった。洞主の瞳の片隅には色硝子の煌めきが宿り、不思議な色をしていた。黒と虹の色。
「……けれども月読様は、天照様と等しくこの世界を司る神。振る舞いはさておき、天津神、国津神の男神の頂点に立たれるお方じゃ。故に、もはやいかなる男神もそれに抗うことはできぬ──」
「でも、……」
「神依。私も長年こちらに居るが、そうまで巫女に執着を見せた神は他にはあらっしゃらない。ましてや月読様は未だに正式な妻神も妻巫女もお持ちにならぬ身。故にそなたを求められれば、きっと大事にしてくれよう。だが……もし」
「……」
「……もしも万が一、拭えぬ想いがあるのなら……少しの勇気を持って、進貢にてその想いを問うといい。祭祀を除き、淡島の巫女が神に干渉できる唯一の方法。……もしそれが通じれば……或いは」
「……少しの……勇気……?」
結局、それが今の神依と禊に与えられた余りに少なすぎる選択肢だった。
「神依……」
洞主は手を引くと、一つ小さく息を吐く。
「きっとそなたも、恋を知ったのだね」
「洞主様──」
その思わぬ言葉に神依が顔を上げると、一直線に洞主と視線が交わった。洞主の瞳の片隅には色硝子の煌めきが宿り、不思議な色をしていた。黒と虹の色。
「……けれども月読様は、天照様と等しくこの世界を司る神。振る舞いはさておき、天津神、国津神の男神の頂点に立たれるお方じゃ。故に、もはやいかなる男神もそれに抗うことはできぬ──」
「でも、……」
「神依。私も長年こちらに居るが、そうまで巫女に執着を見せた神は他にはあらっしゃらない。ましてや月読様は未だに正式な妻神も妻巫女もお持ちにならぬ身。故にそなたを求められれば、きっと大事にしてくれよう。だが……もし」
「……」
「……もしも万が一、拭えぬ想いがあるのなら……少しの勇気を持って、進貢にてその想いを問うといい。祭祀を除き、淡島の巫女が神に干渉できる唯一の方法。……もしそれが通じれば……或いは」
「……少しの……勇気……?」
結局、それが今の神依と禊に与えられた余りに少なすぎる選択肢だった。

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