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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第15章 文枕
 だがこれでようやく、あの子を淡島の巫女として迎えられるのだ。ようやくあの子を──。
 しかしそこまで考えたとき、扉の向こうから大兄の声が掛かった。
「失礼致します、玉衣様。神依様と大弟が参りました」
「うむ──お通し」
それでふと我に返った玉衣は、いそいそと椅子に着く。
 「失礼致します」
「し……失礼します……」
やってきた二人は、片方は何事もなく絨毯の上を進むと頭を垂れ、もう片方は頼りない地にびくびくと、また周囲の調度をちらちらと見回しながら、玉衣の前までやってきた。
 そこは玉衣の秘密の部屋。
 時と、時代と、場所と、世界と、そのあらゆるものが歪められた、あの境の社務所だった。
 少女は頭から被っていた外套をおずおずと取り払う。
 話に聞いていた通り、少女の頬には確かに月読の朱印があった。それを見た玉衣は笑みを浮かべると、手招きして少女を呼んだ。
「神依、お座り。それから大兄は何か飲むものを。神依に瑠璃杯を見せておやり。若い娘の瞳には、貴石の如く眩い輝きで映るであろ」
「かしこまりました」
大兄は苦笑気味に下がり、神依は禊に椅子を引かれると、玉衣の座り方を見て何度もお尻と裳裾を確かめながらちょこんと椅子の縁に座った。足元がふわふわする。
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