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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第15章 文枕
 そしてその温もりは、相手が想いを通わせた巫覡ならなおさら神には必要な糧であったというのに──今となってはそれも危うい。
 「……例え体調が回復したとしても……また進貢に戻れるのだろうか」
「それは……難しいかもしんねーな……。どうしたってあの朱印は隠せねえ。朝は他の巫女達に見られるし、朝じゃなくたって神の目はあるからな。……無理強いはできないだろ」
「……」
お前にも諦めろとは言えねえけどな、と猿彦は言い添えて、気まずそうに頭をかく。いつもは遠慮なく物を言うはずの猿彦でさえ言い淀んで、日嗣は分かっていたはずなのに問うてしまったことを少し後悔した。
 けれども猿彦はまた、言いにくそうに言葉を続ける。
「……それより俺は、またどうしようもねえ噂の方が心配だ。お前が大叔父上殿と何事か派手にやり合って、ってのはもう高天原でもみんな何となく知ってるけどよ」
「……」
「淡島の方で今度は神依のことが噂になれば、また巫女達が騒ぎ出す。そこで天降った男神が、寝物語の種にちっとでもお前の話を出しゃ簡単に結び付けられちまうだろ」
 そうすればまた、嫉妬の憎悪に神依が傷付く。しかも今度は、日嗣と月読の二人分だ。
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