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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第15章 文枕
勿論それは、最初は万人に向けられるような慈愛だったかもしれない。だがそれはその内に少しずつ、また日嗣自身にも違った愛情の芽吹きをもたらしてくれた。
そんな少女を、何故自分は抱きしめてやれなかったのだろう。大叔父の言った通りなりふり構わず抱き寄せて、ただ一度、素直にその心を晒せばよかったのに。
だがあの時の神依はヒビの入った華奢な硝子細工のように見えて、それをしたら本当に壊れてしまうような気がした。それが粉々になる最後の一撃を、自分が加えてしまうような気がした。
そして結局……これもまた月読の言った通り、逃げ出してしまった。
その背は、神依にはどう見えていたのだろう。
だから、もし次に会ったときは今度こそ強く強く抱きしめて、全身でこの思いを伝えてあげたいのに。決して穢されてなどいない、数多男神の愛を捧げられるに充分な器だと、今度こそこの身で証してやりたいのに──なのにこんなことになってしまって。
今となっては、毎日届いていた信仰の温もりも感じられない。
あの秋の香の中で触れた、髪のような、指のような……。
いつからか心地好い目覚めと共にあったそれは、日嗣に取ってはつい隣に目を遣ってしまう程に甘やかで柔らかなものだったのに。
そんな少女を、何故自分は抱きしめてやれなかったのだろう。大叔父の言った通りなりふり構わず抱き寄せて、ただ一度、素直にその心を晒せばよかったのに。
だがあの時の神依はヒビの入った華奢な硝子細工のように見えて、それをしたら本当に壊れてしまうような気がした。それが粉々になる最後の一撃を、自分が加えてしまうような気がした。
そして結局……これもまた月読の言った通り、逃げ出してしまった。
その背は、神依にはどう見えていたのだろう。
だから、もし次に会ったときは今度こそ強く強く抱きしめて、全身でこの思いを伝えてあげたいのに。決して穢されてなどいない、数多男神の愛を捧げられるに充分な器だと、今度こそこの身で証してやりたいのに──なのにこんなことになってしまって。
今となっては、毎日届いていた信仰の温もりも感じられない。
あの秋の香の中で触れた、髪のような、指のような……。
いつからか心地好い目覚めと共にあったそれは、日嗣に取ってはつい隣に目を遣ってしまう程に甘やかで柔らかなものだったのに。

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