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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第15章 文枕
しかしそれでも日嗣はただ安堵して、緊張に強張っていた肩の力を抜いた。だがそのすぐ後には痛みを伴うやるせなさが襲ってきて、自然と目線が下がってしまう。
 その先にあるのはあの日……剣以外の何をも掴めず、今も何も乗っていない空の手のひら。
 「……」
体調を崩しているというのは確かに心配だったが、ただそれ以上に、日嗣は自分がしてしまったこと、できなかったことへの罪悪感もあって、そのせいで避けられているのではないかと思っていた。
 きっと見られたくなかっただろう姿を見てしまい、神依の心も分からないまま不用意に手を伸ばしてしまい……なのにそれら全てを払拭する唯一のことを、自分はしてやれなかった。
 あのとき神依が張った優しい壁は、その向こう側はきっと針で一杯だったはずなのに、それを振り払ってやれなかった。本当はちゃんと伝えたいことがあったのに、できなかった。
 それどころか──神依がいつから自分の罪を知って共に在ってくれたのか、考えれば考えるほどに涙が滲む思いだった。
 あの雨の神楽殿で、まだ互いに孤独なまま肩を寄せていた頃にぽつりと望んだことを……神依はずっと叶えてくれていたのだ。
 ただ隣に在って、想いを寄せて。
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