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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第15章 文枕
この部屋は、それがいっぺんに溢れた世界だった。
「で、こんだけ荒らして気は済んだのか?」
「──済んだように見えるならお前の目は節穴だ。何なら今すぐその面を剥いで、瞳の部分をえぐり取ってやる」
「おいやめろよ、これは特注なんだからな」
そうして数日間、部屋主の心が吹き乱れ、春野辺の花群れのように物が散乱した部屋はもはや文字通り足の踏み場も無く──二人は仕方なく各々畳が見える部分を探し出すと、適当にその花を避けて座した。
しかし猿彦の背後には月読宮から派遣されている衛士が立ち、特に何をするわけでもないのだが、一種独特な威圧感をもたらしている。
「……てかコイツらは誰か来る度にいちいち中まで入ってきて見張るのか?」
「そんな訳ないだろう。お前は特に気を付けるようにと、大叔父上から言い付けられているそうだ」
「脱走か。俺にだって分別はあるぞ」
そんな友の言葉に、猿彦は摘まんでいた豪奢な金の花を放ると猫を追い払うようにしっしと衛士に手を振る。けれども衛士は無表情のまま首を横に振るばかりで、日嗣には今こうして並べて見ても、半分顔を隠しているはずの猿彦の方が感情豊かに見えて不思議だった。
「で、こんだけ荒らして気は済んだのか?」
「──済んだように見えるならお前の目は節穴だ。何なら今すぐその面を剥いで、瞳の部分をえぐり取ってやる」
「おいやめろよ、これは特注なんだからな」
そうして数日間、部屋主の心が吹き乱れ、春野辺の花群れのように物が散乱した部屋はもはや文字通り足の踏み場も無く──二人は仕方なく各々畳が見える部分を探し出すと、適当にその花を避けて座した。
しかし猿彦の背後には月読宮から派遣されている衛士が立ち、特に何をするわけでもないのだが、一種独特な威圧感をもたらしている。
「……てかコイツらは誰か来る度にいちいち中まで入ってきて見張るのか?」
「そんな訳ないだろう。お前は特に気を付けるようにと、大叔父上から言い付けられているそうだ」
「脱走か。俺にだって分別はあるぞ」
そんな友の言葉に、猿彦は摘まんでいた豪奢な金の花を放ると猫を追い払うようにしっしと衛士に手を振る。けれども衛士は無表情のまま首を横に振るばかりで、日嗣には今こうして並べて見ても、半分顔を隠しているはずの猿彦の方が感情豊かに見えて不思議だった。

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